2014年1月17日金曜日

「覇王の家」 司馬遼太郎 著

 徳川幕府の祖、徳川家康を主人公とした小説。天下をとった徳川家康を一般的な英雄という解釈ではなく、よく言えば忠誠心が厚く利に踊らされず粘り強い三河の気質を最大限に利用すべく自分を律し時に豪胆に時に繊細に事を運び天下を取ったと、悪く言えば政治的な冒険は割け家臣の意思に迎合し、戦略的にも天下に欲を見せず地味に積み重ねていくことで天下が転がり込んできたといった論調で描かれています。ただ、織田信長の桶狭間のような派手な博打は打たなかったものの、織田、豊臣、武田、北条など自国より遥かに大きな国に挟まれて降服せず独立を守ること自体が非常な冒険であり、一見地味ですがその冒険で死ななかったことが最大の勝因であり、そこに隠された徳川家康の魅力・知略が小説でも描かれていると思います。

覇王の家

☆☆☆

2014年1月6日月曜日

映画 「のぼうの城」

 和田竜 原作の小説を映画化したもの。でくのぼうを略してのぼう様と領民から慕われていた成田長親率いる500人(領民合わせて3000人)が2万人の石田三成率いる天下の豊臣秀吉軍相手にろう城し、一歩も引かず防戦するというお話。
  テンポ良くコミカルタッチに話が進むので歴史好きでなくても笑いもあり迫力シーンもあり満足できる仕上がりです。しかしながら、城や戦場のシーンなどリアルで奥行き深い描写は歴史ファンには見応えがあり、満足度は高いと思います。
  個人的には、堅城=急峻な山城、石垣の平城というイメージがありましたが、その先入観を払拭してくれる水に浮かぶ土の平城が印象的でした。「忍の浮き城」と後世に呼ばれるだけの堅城ぶりを描写できていたと思います。

のぼうの城

☆☆☆☆