2013年2月23日土曜日

「楚漢名臣列伝」 宮城谷昌光 著

楚漢名臣列伝」 宮城谷昌光 著

 秦末からの楚漢戦争に活躍した人物を取り上げた短編集です。それぞれバラバラに人物を紹介しているようで、1冊を前から順番に読んでいくと秦の滅亡から漢が興り基礎を固めるまでの大枠が理解できるよう書かれています。ただ、項羽と劉邦に関する知識もなく読むのは少し難しいかもしれません。
 特に楚漢の両陣営に属していない人物というのはあまり取り上げられないばかりか、歴史の事実は勝者側からの視点で書かれた書物が圧倒的に多く、敗者視点の事跡は歪められたり小さく描かれ埋没していしまいます。ただ、陳余や田横の人物伝を読むと、事跡の断片から時代の流れに逆行しているとは分かっていても己の信じたものを貫いた人物を掘り出し、ここまでイメージを覆した筆者の視点に驚かされました。美化しすぎている部分もあるでしょうが、歴史的な人物の真の評価は難しいもので、新たな視点が増えるという意味で新鮮です。